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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第27章 今宵はふたりで【過去作派生中編 ‎🤍→主←🐾 ♟️】


「プロの方と同じ音色だなんて、俺も嬉しいです」

さらりと言う筈だったのに、彼女に褒められて嬉しくて目元に熱が集う。

それを見てくすくすと微笑うヴァリスを少しだけ睨んだ。



「っ……笑わないでください、」



「ご、ごめんなさい。でも、少し………、」

微笑いながらほっとしたように目元を解く。

その視線から逃れるように主の寝室の扉をひらいた。



「ほっ……ほら、着きましたよっ」

彼女の部屋へと足を踏み入れ、その手でカーテンを閉める。

複雑なドレスの装飾をてきぱきとした所作で外していく。



「っ………。」

何年経ても恥ずかしそうに身を震わせる彼女をなるべく見ないようにしながらドレスを脱がせていく。


瞳が忙しなくさ迷い、目元を染めてそっぽを向いている彼女に気づいて、手を動かしながら訊ねた。



「まだ慣れませんか?」

仄かに微笑みながら告げると彼女は頷く。



「うん、………ちょっと恥ずかしくて、」

薄絹のシュミーズの上からでもはっきりとその大きさが分かる程痛ましい背の傷痕。

コルセットの紐を解き外した後、夜着を身に纏うのを手伝って。



「では、………俺は一旦失礼します。おやすみなさい、主様」



「うん、………おやすみ」

扉がしまったあとふかふかの寝台へと滑り込み、

胸元に重ね合わせた両の指を置いて、自分の生者の証を感じ取る。

トク、トク………と刻むカウントダウンのようなリズムで打ち鳴らす鼓動を感じていると、

段々と心の蟠りが解けていく。



「……………。」

寝台の上で寝返りを打つと、はらりと額にかかる髪。

目元に流れたことで視界を仄かな白青色に染め上げる。



さら………と指で払うと瞼を閉じ自分の生者の証に集中する。

ヴァリスは深い微睡みへと沈み込んだ。
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