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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第22章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅱ 【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


(これは……なに? どうしてこの指輪が光っているの……?)

混濁する思考を抱え、急いて記憶をひもとく。



そして思い出した。

幼い頃、あの部屋から逃げ出した夜、今この時と同じようにこの指輪が光を放っていたのだ。



(そうよ……それからあの日、)

逃げ出そうとしたことが父に知られ、その後———。



今でも時々怖くなるあの最悪な夜。今にして思えば、あれは未来の前兆だったのだろう。



「!」

慌ててナックを起こそうとしたヴァリスははっとした。

先刻まで響いていた少女の笑い声が、まるで彼女を取り囲むように近づいてくる。



くす、くす、………くす、くす。

ひそ、ひそ、………ひそ、ひそ。



段々と近づいてくる顔のない笑い声。

歌うように、嘲るように。恐怖に凍てつくその身を叱咤してナックの肩を揺する。



「ナック、………ナック起きて! ブルークリスタルが大変なの……!」

けれど、どれ程その身を揺さぶろうとも。

彼の瞼は閉ざされたまま、穏やかな寝息を立てるばかりで………。



(どうして……!?)

まるで眠り続けるように暗示をかけられているようだった。



なんとか彼を起こそうと ばし、ばし、とその背に半ばしたたかに手を打ち付けたり、

軽く頬を抓っても、その瞼がひらく気配はない。



その間にも笑い声はどんどん大きくなっていき、

と同時に朧げだった囁きあいもはっきりととらえることができるようになっていた。
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