第20章 月嗤歌 ED Side A - II【別邸組 *♟】
「ハナマルさん、叩扉もせずに入室とははしたないですよ」
眼で「出ていけ」と告げる瞳。
そんなユーハンの様子には気づかぬ振りをしてヴァリスをみつめた。
「主様、………身体、つらいんじゃないのぉ?」
気遣うような笑みを浮かべて、細い肩にグロバナー家の従者の制服のジャケットをかける。
「へ、………いきよ」
熱い吐息を呑み下すようにしながら呟く。
裸の胸を隠そうと、ジャケットのフロントをかき合わせる指。
けれど白い肌の至るところにある所有印を見止めて、ハナマルのなかでなにかが壊れた。
ぐっと細い手首を引いて、自分の腕のなかへと誘う。
かつてない程に強く引き寄せられて、驚いたように見上げてくる深い青の瞳。
「どうしたの、ハナマ———んんっ!」
気づけば唇を奪っていた。
肩に羽織らせたばかりのジャケットの上から、華奢なその身をまさぐる。
「ん、……ふ、………ぁ、」
吐息のような艶音が零れる頃、我に返ったユーハンが二人を引き離す。