第1章 囚われの姫
ここは遥か遠くにある【ワノ国】
ここに不思議な力を持つ一人の姫がいた
艶のある長い髪
肌は白く美しい
ぷっくりとした桃色の唇
そして
まるで宝石を思わせるような綺麗な青い瞳
その瞳の色はまるで瑠璃を連想させる
【瑠璃姫】
そう呼ばれる彼女には特別な力があった
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「どうか我が息子をお助け下さい…っ!!」
そう言って必死に頭を下げる男性
見るからに上流貴族であろう高価な着物に身を包んだ男性が泣きながら頭を下げる
広い中庭のある部屋に今日も病に身を犯された人がやってきた
「心配せずとも我が娘、瑠璃姫がそなたの息子を癒して見せようぞ」
にっこりと人の良さそうな笑みを浮かべる男
その男が屏風の裏に視線を送ると少女がゆっくりと出てくる
「ぉおお…っ!まさに瑠璃の如く、なんと麗しき姫…!どうか、どうか貴方様のお力で何卒、何卒お助けくださいませ…!」
そう言って更に頭を下げる
少女、瑠璃姫はにこりと笑い横たわっている子供に近づくと手をかざした
すると
手から淡い光がでてそれが子供を包み込んだ
先程まで、呼吸すら辛そうにして頬まで痩せかけていた子供がみるみるうちにふっくらとし、魚の腹の様に真っ白だった顔に血の気が戻って元気になった
「ありがとうございます…っ!ありがとうございます!!」
そう言って我が子を抱いている男は家来に促し桐の箱を差し出してきた
開けなくてもわかる
「これはほんの気持ちでございます、どうかお納め下さい」
「これはこれは……また何かありましたらこの瑠璃姫に任せなさい」
欲望の醜い顔で桐箱を撫でる男
この男こそ、瑠璃姫ことあやめの父親なのだ
そして、用が済めばあやめは、あの部屋に戻らねばならない
「……連れて行け」
先程までの人の良い笑顔は消え、もう用はないと言わんばかりの眼差しを向けてくる
「“アレ”を付けるのを忘れるなよ」
小声で念押しのように言うと、さっさと桐箱を抱えて奥の部屋へ消えていった