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その傷を超えて【ヒプマイ夢】〘一二三夢〙

第1章 俺と君とどっぽっぽ




独歩ちんの目が見開かれる。

そりゃそうだろう。俺が一番驚いてるんだから。

「お、おまっ、お前等……何でっ!? というか、一二三、お前……大丈夫なのかっ!?」

「あ、うん、何か……彼女は、大丈夫なんだよねー、不思議だよなー、ははは」

信じられないとでも言ったように、ポカンとしている独歩ちんは置いといて、彼女をソファーに促した。

お茶を出すのを独歩ちんに任せて、さっそく料理に取り掛かる。

背中に視線を感じながらも、鼻歌なんて歌ってみたり。

特別可愛くデコレーションして、彼女の前のテーブルに置いた。

「目に見えて甘やかし方が凄いな……。一二三はこういうタイプなんだな……」

「何ー? ちゃんどぽも甘やかして欲しいのー?」

独歩ちんの頬を突く。

「アホか、や、やめろってのっ!」

じゃれる俺達を見る事もなく、彼女は俺の用意した気合いの入ったデザートを、かぶりついて見ている。

もう、穴が開くのではと思う程に。

「、見てないで食えよ」

「独歩さん、どうしましょう……。食べるのが……物凄く、もったいないです……」

拳を作って、独歩ちんに訴える彼女は、はしゃぐ子供のように、可愛い。

「せっかくだから食えよ。見てるだけじゃもったいないだろ。食べ物は?」

「粗末に、しない」

「よし。さぁ、食え」

頭をポンとされて、独歩ちんに柔らかな笑い方で返すのを見て、また胸がツキンと痛んだ。

そう言えば、彼女の名前を初めて聞いた気がする。

「し、下の、名前……な、なんてゆーの?」

俺の言葉に、彼女の食べていた手が止まる。

独歩ちんへ向けるものとは、明らかに違う、警戒心剥き出しの目でこちらを見る。

今更だけど、少し胸がぎゅっと締め付けられる。

「何で、ですか?」

「え、あ、いや、俺、君の事、何も知らないなぁとか、思ったり……」

「知る必要、ありますか?」

彼女の拒絶が、形になってダイレクトに突き刺さる。

また、黒いものが広がって、目眩がする。

「こら、。男嫌いなのは分かるけど、一二三は俺の友人だ。あんまり冷たくしてやるな」

「すみませんでした」

じっとこちらを見て、彼女は謝った。

こんなにもまっすぐ見られるのは、慣れない。




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