第8章 指名
「リンどこ行くんだい?」
「ちょっと飲み物とか買ってくるよ」
「なら私も行くよ。一人だと大変だろ」
「平気だよ!すぐそこだから」
「そうかい?じゃあ何かあったら電話して」
「うん」
浜辺にある近くの店へ入り、ペットボトルの飲み物を人数分買って早々と戻ろうとした時だった。
「一人なの?可愛いね、もし良かったら俺らと一緒に遊ばない?」
ポンっと肩を叩かれ後ろを振り向けば、爽やかそうな男性二人組が立っている。
「すみません、友達と来てるので…」
あまりに突然の出来事に驚きながらも首を横に振る。
普段、悟や傑と共に行動する事がほとんどだからナンパなんてされたのは初めてで…一体どうしたら良いのか分からない。
「ならその友達も一緒にどお?俺達も二人いるしさ!」
そんな私に、目の前の彼らは退いてくれるどころか…グイッと距離を詰めて私の肩に腕を回した。
え、どうしよう…これ、振り解いても良いの…?きっと私が本気を出せばこの男性達なんてすぐに追い払う事なんて可能だ。だけどこんな所で体術を使う訳にもいかないし…せっかく理子ちゃんが海を楽しんでくれているのに問題を起こすわけにもいかない。
どうしたものかと黙ったまま考え込んでいると…
「おい、そいつにナンパするとは良い度胸してんな」
そんなドスの低い声が突然聞こえてきて、前を見上げると。悟がもの凄い恐ろしい表情でこちらを見下ろしていた。