第7章 嫉妬
「…リンさん?」
突然俯いた私に、七海君は心配そうに顔を覗き込んでくる。
「怖くなった?無理しなくて良いよ」
七海君と繋がる事に怖くなったと勘違いをしたのか、七海君が困ったように心配気な表情で私を引き寄せると優しく抱きしめる。
「…違うの」
そう呟き七海君の胸に顔を埋めると、トクトクと温かくて優しい心臓の音が聞こえる。
「…どうした?」
トントンと背中をそっと撫でてくれる七海君の穏やかな手に、思わず泣きそうになる。
七海君はこんなに優しいのに…私は過去に嫉妬して…雰囲気も壊して…最低だ…
「…嫉妬したの…七海君の元カノに…」
「元カノ…?」
私の呟いた言葉に、七海君は繰り返すようにして言葉を重ねると。トントンしていた手をピタリと止めた。
「…七海君すごくスマートだから…元カノともこういう事してたのかなって…ソレも…元カノと使ったから今持ってるのかなって…思って…」
七海君の持っているゴムを見つめた後。ポツリポツリと話し出し思っていた事を言い終えると。七海君は私を抱きしめていた身体をバッと勢い良く離した。
どうしよう。やっぱり…呆れられたのかも…
「そんな訳ないだろ。元カノなんていない」
私の頬へとそっと触れ、困ったように眉を垂れ下げる。
「好きになったのも、こういう事したいって思ったのも、もちろんこういう事したのもリンさんが全部初めてだ」
「……え…」
「勘違いさせてごめん。でもアレはリンさんと使いたいと思って用意した物。リンさんに触れたいってずっと思ってた。だからもしこういう雰囲気になった時、我慢出来る自信がなかったから用意してた」
そう…だったの……?
「これでも男だから。彼女と部屋で二人きりでいたら、そういう事も考える。むしろ最近ずっと我慢してた。でもダサすぎるな、リンさんにこんな事言わせて…ごめん」