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【呪術廻戦】抱きしめてそばにいて

第6章 偽の彼女



彼女達が見えなくなった所で手を引いていた悟の腕をゆっくりと離す。悟の顔を見上げれば、悟はまだ驚いた表情のままで…




「…悟?」




そんな私の声にやっとハッとしたように、こちらを見下ろした。




「大丈夫?ボーッとしてたけど」




「あぁ…別に。平気」




「ごめんね、いきなり変な事言って。悟が怒りそうに見えたからさっきの設定私も使っちゃった」




笑いながら言う私の言葉に、悟は一度頭をガシガシと掻くと「なるほど」と素気なく答える。




「でも良く怒らなかったね。悟の事だから酷い事でもあの子に言うのかと思ってたよ」




「キレる寸前でお前が来た」




「え、危なかった!間に合ってよかったー」




それにしてもやっぱり悟って本当にモテるんだなぁ。隙あらば逆ナンされてる。それに知らない人にあんな腕を絡めて近付かれたら、誰だって怒りたくもなるよね。しかも悟短気だから…余計に。




「悟に本当の彼女が出来れば良いんじゃない?」



「は?」



「偽物の彼女じゃなくて、本物の彼女。そしたらナンパもされなくなるよ。悟モテるし本気出せばきっとすぐ出来るでしょ?」




私の言葉に、歩いていた悟の足が急にピタリと止まる。だけれど私は悟が足を止めた事に気が付かずそのまま歩き続けた。




だから私は…




「……お前に、そんな事言われたくなかった」




悟のそんな小さな言葉も。




サングラス越しに歪ませた苦しげな表情も。




………私は気付く事が出来なかったんだ。





「彼女なんかいらねェよ。好きな奴と付き合わなきゃ何の意味もねーだろ」




「あれ?普通に真面目な事言うんだね」



「だから俺の事何だと思ってんだよ。まじで」



五条家次期当主であるが故に。悟は今までずっと独りだった。媚を売られ、利用しようとする大人に囲まれ。そんな中で生きてきた。




だから……



苦しみを隠す事が上手い悟に。

苦しみを隠す事に慣れてしまっている悟に。





……私は知らぬ間に、何度も彼を傷付けていたのかもしれない。


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