第34章 抱きしめてそばにいて
またこうして他愛もない話を出来ることがまるで奇跡みたいに感じる。
いつもは、君が隣にいるのが当たり前で。笑顔を向けてくれるのが当たり前で。
だけどやっぱり、僕達の生きるこの呪術界に当たり前なんてないんだと…当然なんて無いんだと…そう強く実感した。
明日何が起きるか分からない。
それはリンにも
そして僕にも言えることだ。
呪術師をやっている以上、明日生きている保証なんてどこにも無い。
「悟は怪我しなかった?」
僕の髪をふわふわと撫でながら、心配そうに眉をひそめるリンは小さな声でそう呟く。
「うん、大丈夫だよ。僕はね…」
「そっか、それなら良かった」
「……傑のこと、聞かないの?」
リンから少しだけ視線を外し、言葉を漏らした僕に、リンは僕の髪を撫でていた手を一度止めると。
「聞かないよ」
「……………」
「大丈夫だよ、悟。分かってるから」
「……………」
「悟のことも、傑のことも、分かってるから。大丈夫」
そう言って、僕の頬をするりと撫でたリンは、そのままぎゅっと優しく僕を頭から包み込む様にして抱きしめると「私は何があっても、二人のことが大好きだよ。それが変わることは永遠にない」…とそう優しく震える声で囁いた。