第5章 教室
傑との体術訓練を一試合終えて自動販売機へ向かうと、その前に悟がいるのが目に入った。
正直言ってまた気まずい。だけどこのままなわけにはいかないし、避けるのもどうかと思うわけで…
悟へとゆっくり近づいていたはずなのに、呪力に敏感な悟はそんな私にすぐに気がつくとこちらへと振り返った。
「おつかれ」
「おー」
まるで何事も無かったみたいにそう言うと、悟も特にいつも通り返してくれる。
「何か飲むなら奢るけど」
顔と性格に似合わず甘党な悟は、体術訓練後だというのに甘々なミルクティーを飲んでいる。
「え?良いの?ありがとう」
「いつもので良いんだろ」
「うん、お願いしまーす」
悟はチャリチャリと慣れた手つきで小銭を入れると、ペットボトルのストレートティーを押してそれを自動販売機から取り出した。
「ん」
「ありがと」
冷たくなっているペットボトルを受け取ると、それを開けて喉へと流し込む。
何だろう…何を話そう。
いつもだったらこんな事考えた事もないのに…何だかいつもよりも沈黙が窮屈に感じる。
そんな考えを察したのか、悟は飲み終わったミルクティーの缶を呪力で小さく潰すとそれをゴミ箱へと投げ入れた。