第30章 紙切れ一枚
「おいそこのバカップル、人の仕事場でイチャつくな」
硝子は不機嫌そうに椅子へ座りながら振り返ると、飴を口へと放り込む。
「あ、ごめんねうるさかった?」
悟が悪びれた様子も無くわざとらしくニヤリと笑ってそう言いながら、再び雑誌をペラペラとめくると、そんな様子を見ていた硝子が口を開いた。
「そもそも聞いてない情報が勝手に聞こえてくるんだが」
「あぁーそうそう!だから僕達ここに来たの!はいじゃあリンちゃんせーので言うよ♪」
「え?何なに?何をせーので言うの?」
「そんなの一つしかないでしょ♡せーのっ、僕達婚約しましたー♡♡」
そんな悟の声が治療室の中に響き渡り、あぁ!せーのってそう言うことか!と今更納得した私に悟は「ちょっと僕達以心伝心してるんじゃないの!?」といじけたようにそんな無茶な事を言っていくる。
そんなグダグダな私達を硝子は呆れた様に見つめると
「お前たちが婚約か、心配しかないな」と言った後「まぁでもおめでとうは伝えておくよ」と小さく笑い瞳を細めた。
「ありがとう硝子」
そんな硝子へニコニコと微笑めば「硝子も早く結婚相手見つけなよー僕達みたいに♡」とまた、悟が信じられないほど余計な事を言う。
「五条、お前はリンがいてくれてよかったな。リン以外の人間はお前と結婚なんて絶対に無理だろうからな」
「そんなの当然じゃん〜僕だってリン以外と結婚とか死んでも無理だし、そもそも結婚したいとか絶対思わないし。オッエーって感じでしょ」
「お前は本当クソガキの頃から何にも変わってないな、まるで成長が見られない」
「あーはいはい、僕がそういうの気にしないの知ってるでしょ。硝子もいい加減諦めなよね、僕がクズじゃなくなるなんてありえないんだから」