第29章 五条家当主
「当主様がこちらにどなたかをお連れしたのは初めてでしたので、とても驚きました」
「え?そうなんですか?」
「はい、ですので今日#NAM1#さんをお見かけした際、すぐにあの時の方だと分かりました」
そうだったんだ。確かにあの日…悟は勝手に五条家に人を入れる事は出来ないって言ってたっけ。私思いっきり入ってたけど…
「私は当主様が産まれた時からこちらで働いておりますが、先ほどのお二人を見てとても嬉しかったんです。当主様のあんなにも穏やかで優しい表情を初めて見ました。あんなにも幸せそうな笑顔を初めて見ました」
目尻を下げ、まるで自分の事のように嬉しそうに話してくれる三田さんは、子供の頃からきっと悟を見守ってきた一人なのかもしれない。
「当主様は#NAM1#さんの事をとても大切に思っていらっしゃるのですね」
「…いつも、優しくしてもらってます」
自分で大切にしてもらっているなんて照れくさくて流石に言えず、小さく微笑みながらそう答えれば、三田さんは嬉しそうに瞳を細めた。
「当主様は生まれた瞬間からずっと五条家の次期当主として育てられ生きてしました、子供ながらに寂しい思いや辛い思いもしてきたと思います。ですので…まぁ少し捻くれた性格になってしまったのですが…本当はとてもお優しい方です。将来を少し心配していたのですが、今日のお二人を見て安心しました。#NAM1#さんがそばにいて下さるのなら、当主様は大丈夫ですね」
三田さんはきっととても良く悟の事を理解している。だからこそ悟を心配していたんだ。
五条家の中でも、こうして私と悟の事を応援してくれる人もいるんだ。悟の気持ちを大切にしてくれる人もいるんだ。
そう思うと、何だかとても嬉しくて泣きそうな気持ちになった。