第26章 恋人紹介
その瞬間、辺り一面が一瞬にしてシーンとなる。
目の前ではぽかーんとした表情をしている生徒達。
「マジ?」
まず初めに声を出したのはパンダ君。
「マジ♡」
そしてそんなパンダ君へ即答する悟と、まさか悟が付き合っていることをこんな流れて堂々と生徒達に話すと思っていなかった私は彼の隣で唖然と立ち尽くす。
「悟って誰かと付き合ったり出来たんだな」
次に話したのは呪具を肩に置き握りしめている眼鏡をかけた女の子…確か彼女は…見たことあるな…御三家の一つ禪院家の子だったはず。
「ちょっと真希〜それって失礼じゃない?僕こう見えてリンちゃんに10年も片想いしてたんだよ?あ、ちなみにリンが初カノでーす♡」
「いや、全くいらん情報だわ」
「しゃけ」
……しゃけ?
「五条先生の恋人…」
乙骨君は何を考えているのか、私をマジマジと見つめている。
担任の先生の恋愛事情なんて…皆別に聞きたくなかったよね。
未だに肩をぎゅっと抱きしめてるどころか、背中を屈ませて顔を近づけてくる悟を私はグイグイと片手で押すと「ちょっとリンちゃん照れないの♡」と楽し気に口の端を持ち上げる悟を睨み付けた。
照れるとか照れないとかじゃなくて…生徒達の前でこういうことをやるな!と思いながら私は彼らを見下ろしニコリと微笑む。
「えっと、影千佳リンです!今日はよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる私に生徒達は先ほどまでの凍り付いた雰囲気を変え「「「お願いしまーす!」」」「明太子!」と頭を下げてくれる。