第25章 呪いの子
「これは何かな?乙骨憂太君」
札が壁一面に貼られた異様な空間。
その中心に座っている少年へ向かって刃先が捻れたナイフを持ち上げ彼を見下ろす。
「ナイフ…だったものです、死のうとしました」
彼は椅子の上で小さく丸まるようにして背を屈めながら、うつむきボソボソと呟く。
「でも里香ちゃんに邪魔されました」
「暗いね、今日から新しい学校だよ」
僕はパッと捻れたナイフを手放すと、カランカラーンっと乾いた金属音を響かせナイフが下へと落ちて行く。
「行きません、もう誰も傷付けたくありません。だからもう外には出ません」
「でも、一人は寂しよ?」
彼が僕の言葉に服を掴むようにして握りしめたのがわかる。
図星だったんだろう。誰も傷付けたくない、だけど…誰にも関わらないのは寂しい、そしてそんなのはどう足掻いたって無理な話だ。
何故なら僕がそうだったからだ。
くだらない五条のしがらみに幼い頃から縛り付けられ…小さい頃は何度もそんな世界から抜け出したいと願った。誰にも関わりたくないと願った。
この最強の僕がだ。今なら笑い話にもならないほど取るに足らない事だが。
しかし、僕は…結局一人なんて本当は望んでいなかったんだ。
傑や硝子と友になり…
……そしてリンを愛した。
温かいと思った、今までに感じた事もないほどの幸福感に満たされた。
だからこそわかる。
僕は一人になりたかったんじゃない、まるで一人のように感じるその世界が…僕は嫌だっただけなんだ。
「君にかかった呪いは使い方次第で人を助けることもできる、力の使い方を学びなさい。全てを投げ出すのはそれならでも遅くはないだろう」