第4章 手を引かれる
走ったまま校舎に入り2個目の角を曲がった所で、ドンっと勢い良く何かにぶつかり思わず後ろに倒れそうになる。その瞬間パシっと誰かにより腕が掴まれ一瞬にして身体が引き寄せられた。
「すみません、大丈夫ですか?」
身体にはフワリと温かさを感じる。誰かにぶつかり受け止めてもらったんだと分かったところで、頭上から降ってくる聞いた事のある声に慌ててと顔を上げた。
「あっ、七海君…」
私を受け止めてくれたのは、少し驚いた表情をした七海君だった。
「怪我してませんか?かなりの勢いでぶつかったので」
掴まれていた腕と、引き寄せられていた身体がゆっくりと七海君によって解かれていく。
「大丈夫!ごめんね、私前見て走ってなくて…七海君こそ怪我してない?」
慌てて七海君から離れると、七海君は「大丈夫です、あなたがぶつかったくらいで怪我はしません」と冷静に話した後、「ふっ」と喉を鳴らして笑った。
その声に驚き七海君を見つめると、目を細めどこか楽しそうに彼は小さく笑っている。
「……七海君⁉︎どうかした?」
「…すみません、前を見ないで走るなんて随分無茶な事をするなと思って」
手の甲で口元を押さえる七海君は私を優しく見下ろす。
「確かに…前見ないで走るとか今更だけど危険行為すぎるよね」
思わず七海君につられて私もクスクスと小さく笑ってしまった。
「はい、これからはちゃんと前を見て走って下さい」
「うん、ちゃんと前見て走ります」