第22章 揉め事
「硝子〜どうしよーーー!!僕リンと喧嘩しちゃったよぉぉー」
くるくると回る椅子に座りながら項垂れる僕を見て「はぁ…」と明らかに硝子が面倒臭そうな溜息を吐き出す。
「しかもさ、聞いてよ。今日七海と出張行ってるんだよ!二人で!!それなのに喧嘩した!!喧嘩なんてしてる場合じゃないのに…もしあの二人の間に何かあったらどうしよおぉぉぉぉーー」
ぐだぐだと言葉を吐き出す僕に、硝子は机に向けていた視線をこちらへと移すと。
「それはご愁傷様だな、彼女が元カレと出張なのに喧嘩するとは。普通バカでもそんな事しない。もしかしてリンが悲しんでるのを見て七海がモトサヤ復活狙ってくるかもな」
「ちょっと!そこは僕のことフォローしてよ!!てゆうか七海はそんな事しないよ!リンだって絶対浮気しないし!!」
「分かってるなら喚くな、鬱陶しい」
硝子はやれやれといったような顔をすると再び机へ視線を戻す。
「でもさ…何も無いって分かってても心配なものは心配なんだよ。最強の僕だってリンの事となると不安になる…それなのにアイツ…僕のことめんどくさいって言ったんだ!酷いと思わない?」
うえーんと泣きマネをする僕を見て硝子は、冷たく言葉を吐き出す。
「まぁ実際今聞いてて面倒くさいしな」
「愛って言ってよ!愛ゆえのめんどくささでしょうが!!」
「なら愛のために少しは大人になったらどうだ」
「それはむーり!だってこれが僕だから!そしてリンはそんな僕が好きだから!!」
「何言ってんだ、お前。さすがにリンが可哀想に思えてきた」
「でもさ、冗談抜きに…本気で不安なんだよ。だってあの二人は嫌い合って別れた訳じゃないし…それに七海はまだリンのことを……」
僕はそこまで言って言葉を止めた。
僕は七海を嫌いにはなれない。むしろ好きだ。信頼だってしている。仲の良い後輩だと思っている。それは例えどんなにリンを好きでも変わることはないだろう。
だから僕は…ただ僕の恋人であるリンを信じるしかない。
僕を好きだと言ってくれるリンを。僕が好きすぎてどうしようと言ってくれたリンを。ただ信じるしかないんだ。