第3章 初めての
「……はぁ、何やってんだ俺」
壁にもたれていた身体をそのままズルズルズと床へ下ろし、しゃがみ込む。
全然我慢できてねェじゃん。つーかあの距離であんな顔されたら我慢なんて無理だろ普通に。
「…しかも、無限使えよ…呪具頭から被るとか余裕なさすぎてダセェ…」
言い訳も最悪だ。それすらもダセェ。アイツは天然だからあんな嘘くせェ言い訳でも騙されてくれたけど…傑あたりに聞かれたら死ねるレベル。
髪をぐしゃぐしゃとかきながら溜息を落とすと、左手に握っていたサングラスをかけた。
あんな事をしたのにわざわざサングラス渡してくれるし。本当そういう所だよ…俺を夢中にさせんのは…それも無意識だからタチが悪りい。
リンの先ほどの真っ赤に顔を染め、うるうるとした瞳で俺を見つめる表情を思い出す。
「…はぁ、まじで無理」
取り返しのつかない事をしてしまったのは頭では分かっている。
それなのに、リンの初めてのキスだと聞いて、何処か浮かれている自分もいて。それがまたさらに俺をイラ付かせた。
明日からどんな顔して会えば良いんだよ…
他人の顔色なんか今まで一度だって覗った事なんてないのに。ましてや女なら尚更だ。
まさか自分がこんな感情に振り回される日がくるなんて…