第21章 恋人とデート
「昨日は子供っぽいとかそんな話ししてたけど、僕達はやっぱりいつの間にか大人になったんだね。だって今までの僕達だったらきっとこうやって傑の話をすることなんて無かった」
高専時代は、まるでそこにはポッカリと穴が空いたみたいに、私達は傑の話を避けていた。
傑の気持ちに気がつかなかった自分達に悔やみながら。
傑の手を掴むことが出来なかった自分達にイラ立ちながら。
傑との思い出を、まるで箱の中に閉まってしまったみたいに。
私を見下ろし、ゆるりと口角を上げる悟の表情はとても冷静にサングラス越しに目を細めているのが分かる。
「確かに傑は呪詛師になった、でもだからって僕達と傑との思い出まで変わるわけじゃない。馬鹿みたいに笑って馬鹿みたいなことばっかりして、4人で笑い合っていたあの瞬間が…僕達にとっては間違いなく青春だった」
うん、そうだ。
私達にとって、何よりも四人一緒にいたあのときが…青春だった。大切な瞬間だった。
「だからさ、無理に傑との思い出を隠そうとする必要はないよ。僕だって傑のことを思い出す時なんていくらでもある。リンと同じ」
悟は、傑と親友だったんだ。きっと私なんかよりももっともっとたくさんのことを考えてる。
だってあの時、誰よりも辛い思いをしたのは間違いなく悟なんだから。
そしてきっと…傑ともしまた再会する事があった時…
傑が呪詛師として私達の目の前に現れた時…
「傑を止めるのは僕の役目だ、だってアイツは…僕にとってたった一人の親友だからね」
真剣に私を見下ろし、少しだけ寂しそうに笑う悟の笑顔を。
きっと私は一生忘れない。