第18章 自分の想い
「七海君…ありがとう」
そうポツリと呟いた私に、七海君は優しく微笑む。
どうして今まで気がつかなかったんだろう。
いつも私を見守っていてくれた悟の優しさに、いつだって私を支えてくれていた悟の温かさに。
多分私は気がついているようで、きっとちゃんと気付けていなかった。
私はもう一度七海君を見つめると、ゆっくりと口を開く。
「だけどね、七海君…一つだけ七海君は勘違いしてることがあるよ」
七海君に言われて気がついたもう一つのこと。
私自身、気が付いていなかった大切なこと。
どうして私は彼を忘れられなかったのか…どうして彼を思い出しては辛い気持ちになってしまったのか。
やっぱり私達はあの時ちゃんと話し合うべきだった。お互いの気持ちを…素直な気持ちを…心に溜まってしまっていた気持ちを…
「あの時、私が一番笑っていたのは七海君の前だよ。一番に辛い気持ちをほぐしてくれるのもいつも七海君だった。七海君に抱きしめられるだけで安心して、七海君の笑顔を見るだけで…私は毎日が幸せだったの。すごく好きだった、とっても大切だった。私の高専生活は全てが七海君で埋め尽くされるほど、私は七海君が大好きだったよ!」
「……っ…」
私の笑顔に、七海君が大きく目を見開く。
そしてその表情はゆっくりと戻っていくと、私を困ったように見下ろしたあと優しく微笑んだ。
「…本当に、あなたって人は…」
私はきっと、ずっとこの言葉を七海君に伝えたかった。
私はあなたが大好きだったと、
私に恋を教えてくれてありがとう
私の恋人になってくれてありがとう
私を大切にしてくれてありがとう
私を好きになってくれてありがとう
突然訪れた私達の別れから……
私はずっとこの言葉を七海君に伝えたかったんだ。