第17章 二人でデート
コツコツと足音を鳴らし、こっちへとゆっくり歩いてくる悟。
今更もう一度エレベーターに乗ったって意味はない。だって次はきっと下に着いてエレベーターを降りた途端、瞬間移動した悟に捕まるだけだ。
そもそも、私何で逃げてるんだろう…どうして悟から…逃げてるんだろう。
自分の気持ちが分からないから?モヤモヤしておかしいから?悟にこんな姿見られたくないから?
だめだ、やっぱり今日の私はどうかしてる。
俯いていた私の視界に、目の前で足を止めた悟の靴が目に入る。
私はそのままゆっくりと顔を持ち上げ、悟を見上げた。
私を見下ろしてくる悟の表情は、いつになく冷静でそれがまた私をおかしくさせる。
私はそんな視線に耐えきれなくて、すぐにパッと目を逸らせば頭上からは「はぁ…」と呆れたため息が聞こえてきた。
悟…やっぱり…怒ってる。
「分かったよ、もう何も聞かないし何も言わないから」
その声は呆れたように、だけどやっぱりどこか優し気に話し始める。
「はいはい、僕の負け。リンにそんな顔されてこれ以上何か出来るわけないじゃん」
そう言った悟はポケットに手を入れると「ほーんと僕って甘いよね」と付け加え、呆れたように笑った。
「ほら、もう部屋入りな。明日も任務でしょ」
悟は私の背中を優しくトンっと押すと、言われるがまま玄関を開ける私に「おやすみ」と言って早々とドアを閉めるとゆらゆらと手を振った。
「…今までずっと我慢してきたんだ、あと少しくらい待つよ」
だからもちろん、こんな悟の呟いた言葉を。私は知るはずもない……