第16章 酷い夜だからこそ
映画を観ながらいつの間にか眠ってしまったリンにそっと毛布をかける。
僕はソファーの前の床に座り込むと、そっとリンの目元へと触れた。
薄らと浮き出ているクマ、疲れているんだろう。
今日は重めの任務だったと聞いた。かなり酷い状況だったとも…
はぁ、本当は僕が行ければ良かったんだけど。そんな訳にもいかないからね…
まさか特級術師というしがらみが、ここに来て足枷になるなんて。
まぁでも、酷い任務だからってリンの変わりに行くとか、さすがの僕でも引くレベルで過保護すぎるか。
スースーと寝息を立てるリンを見つめ、ソファーへと頬杖を付いた。
リンは昔から、人に頼るのが苦手だ。
甘えるのも、自分の気持ちを人に話すのも同様に。
両親に捨てられたと言っていたせいかな、きっとお婆さんには遠慮して我慢する事を癖にしてしまったんだろう。リンを大切にしてくれていたって言っていたからきっとなおさら。
僕に甘えてほしい
頼ってほしい
潰れないでほしい
我慢しないでほしい
リンの辛そうな顔を見るたび、何度もそう思ってきた。
高専時代はその役目は僕じゃなかった。
けど、だけど今なら…
僕がリンの隣にいても良いよね…
一番近くで君を見守っていても良いよね…