第10章 雪の夜
別に言いたく無いわけではなかった。
言うタイミングとか、言ってしまったら気を使わせてしまいそうで…
でも、本当は何処かで恐れていたのかもしれない。
誰かに話す事によって、自分が一人だと実感してしまう事を。
だけど悟の言葉を聞いた今、意外にも私の口はすんなりと言葉をポツリポツリと漏らしていく。
「うちの家系、非呪術師の家系なんだけどさ…非術師からしたら呪いの見える私達って異色な存在でしょ。だから両親は私の事が怖かったみたい…それで小学校低学年の時に私は家を出されたの」
悟の部屋には、私が話す静かな声だけが響く。
「だけどそんな私をおばあちゃんが受け入れてくれて、大切に育ててくれて、愛してくれた。あぁこれが家族なんだって思ったよ。けど、おばあちゃん私が高専に入る少し前に亡くなってさ。両親とは家を出てから一度も会ってないし連絡もしてないから…だから私……」
そこまで呟き、言葉を止め…俯いていた顔を上げようとした時だった。
「言わなくて良い、分かったから」
「………っ…」
その声は優しく、私の頭上から降ってくる。
「泣きたい時は泣け、胸くらい貸してやる」
悟は私の後頭部をグイッと片手で引き寄せると、そのまま自分の胸へとそっと押し付けた。
…泣く……?
そう思いながらも、自分の頬に触れるとそこは何故か濡れていて。涙がポタポタと溢れ出していた。
私…泣いてる…
平気なはずなのに。仕方ない事だって理解してたはずなのに。
悟の抱きしめてくれる腕が温かい。
私を引き寄せるてくれる身体がどうしようもなく心地良い。
そうか、私…本当はずっとずっと苦しかったんだ。
一人になったこと、家族に見捨てられてしまったこと。
理解しているつもりで、本当はずっとずっと辛かったんだ。