第10章 雪の夜
結局30日は、四人で映画を見たりボーリングをしたりして夜までとっても楽しい時間を過ごした。
遊んだ帰りそのまま実家へ帰る事にしたらしい、悟と硝子と傑を見送るために駅の改札口で切符を買っている三人を待つ。
私はそんな三人に、自分は明日実家に向かうと嘘を付いた。硝子は私が残るなら自分も明日出発すると言ってくれたけど…実はそのまま寮に残るつもりだったため正直焦った。その後は「大丈夫だから気にしないで!」と何とか説得し納得してくれたようだった。
「あー、寒みぃ」
「寒いね、耳の先冷え冷えだよ」
早々と切符を買ってきた悟がズボンのポケットへ手を入れながら一人戻ってきて、壁に寄りかかり待っていた私の隣へと立つ。
年末年始の休みに入っているからか、夜にもかかわらずかなり混雑していて。そんな中でも相変わらず悟はかなり目立っていた。
至る所から見つめられる視線。それは老若男女問わずだが…やっぱり女の子からが多い。
「お前さ」
「ん?」
そんな悟が小さく呟き私を見下ろす。
悟のサングラスには、鼻を赤くした私が写って見える。
「…もしかして」そう悟が再び呟いた時だった。「おまたせ」と切符を持った傑と硝子が帰って来て、悟の言葉はそこで止められる。
「…悟?」
何かを言おうとしていた悟に、私は首を傾げるけれど。悟は「やっぱいい」と視線を逸らすとそのまま話すのを辞めてしまった。