第4章 隠し味
こねた挽き肉に卵、牛乳にひたしたパン粉、ナツメグを入れ、先ほどレンチンした玉ねぎも加えてさらにこねる。
塩胡椒して形を楕円形に整えたら完成だ。これで後は五条先生が食べたい時に焼いてもらえばオッケー。
職業柄このくらいの工程はなんて事ない。それよりも出来たハンバーグのタネが美味しそうで、今すぐ焼いて食べたくなってくる。
だけどお風呂から出て来た五条先生が、カレーの後にハンバーグ食べてる私を見たらさすがにドン引きでしょ。君ってフードファイター系? って。
別にありのままの私でいいんだけど、真剣に迷った末食べるのをやめた。私にだって恥じらいってもんはある。
作ったおかずを冷蔵庫に入れておこうと引き出しからキッチンラップを取り出した。
ハンバーグのタネを包み終えると、ラップがちょうど無くなっておひたしを入れた小鉢の分が足りない。
キッチンラップの予備は、シンクの上の棚に置いてある。少しかかとを上げて扉を開くと、ラップの箱が見えた。
ぐっと背伸びをすれば取れるはず。ミニ脚立もあるから持って来て広げればいいんだけど、面倒くさくて、うーんと手を伸ばす。
「あっ!」
やってしまった。箱を掴もうとしたけど掴みきれず、指から滑り落ちて棚の奥に入り込んでしまった。もうラップの角しか見えていない。足がつりそうなくらい踵を上げて腕を伸ばす。
「うーん」
思いっきり爪先立ちしたその時、大きな影が頭上に覆いかぶさった。
私が伸ばしてる腕の先にそれより長い腕が伸びていて、棚の奥に入っている。ボディーソープのシトラスの香りがふわっと鼻腔をくすぐった。
「取りたいのこれ?」