第14章 再会
シンクに目を向けた。黄色の水玉模様と青色の水玉模様のマグカップが並んでいる。デートの記念にって五条先生が買ってくれたペアマグだ。やっぱり彼はここにいた。
毎朝ベッドで抱きしめられていた腕の感触はまだ残っているし、朝ごはんを一緒に笑って食べたことも、すれ違う時に大きな体が邪魔だったことも覚えている。
先生が作るカレーは本当に美味しくて何度かリクエストした。隠し味は結局教えてくれなかったけど。
一緒にお風呂に入って湯船の中で肌が触れたこと、肩を貸そうとしたら急に押し倒されてキスされそうになったこと、そんな彼を蹴飛ばしたことも手を繋いで眠ったことも、全部私の中に残ってる。
「……あーもう! やめやめ!」
いつまでぐちゃぐちゃ考えてんだろ。全ては過ぎた事だ。
残骸となっている僅かな恋心はきっと彼が本誌に登場したら泡のように消えて無くなるだろう。漫画の世界の中で生きてる人だと実感すれば、今度こそスパッと終わりを迎えられるはず。
オーナーとの交際を前向きに考えてもいいのかもしれない。そんな中で少しずつだけど五条先生を日常から消せるような気がした。