第14章 再会
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そんな折、ひとりの男性がアパートに訪ねてきた。呼び鈴が鳴って玄関を開けると、身なりのいいスーツ姿の男性が立っている。
前髪が重たすぎるのが気になるけど、切れ長の目に薄い唇。いわゆる美形の類だ。
やや年上だと思われるその男性にどことなく既視感を感じたけれど、きっと抜け落ちた記憶の片隅に残る誰かと被っているのだろう。男性は深々とお辞儀をした。
「はじめまして、ここのアパートの大家つまりオーナーをしているものです」
「はじめ、まして……」
「実はこのお部屋ですが」
男性が話し始めた。それによると、私の部屋は事故物件だったにも関わらず、家賃を通常の金額に設定していて、その件を今になって仲介不動産会社から聞き、それで直接お詫びに来たのだと言う。
「もしよろしければ、別の住まいを提供できますが物件を見てみませんか?」
「いえ大丈夫です。特に困っていないので」
「家賃は3年間無償にしますし、ここよりも快適な部屋です。それともこのアパートになにかこだわりでも?」
「……そういうわけでは」