第14章 再会
彼が別れ際に言い残した言葉を今もはっきり覚えている。
――千愛、僕を信じてて。必ず君を助ける。その記憶障害も何もかも。
半年以上も前のことなのに、まるで昨日の事のように脳内で声が再生される。
こんな意味不明なことをいつまで私は思ってるんだろう。
折り畳み傘にポツポツと雨の音が鳴り響いた。浮かない顔をしてしまっていたのか、スミレさんは私の顔を見ると心配そうに眉頭を寄せた。
「忘れらんないか、いい男だったもんね」
「別に。彼とは深い仲だったわけじゃないし」
こんな言い方をすればするほど心の中は反逆罪でも起こすように暴れようとする。五条先生のこと今でも好きなくせにって。忘れられなくて苦しいんでしょって。
こんな私をきっとスミレさんはお見通しだ。