第13章 ハロウィンの花嫁
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渋谷事変が起こる6時間前――。
私は外に買い出しに出ていた。何故ってそれは悟がハロウィンパーティーをしようなんて突然言い出したから。仮装して楽しまないかって。
誘いを受けたのは数日前で、これまた急な話だとは思ったけれど、悟が思いついたことをふいに行動に移すのはよくあることで、8年も付き合っていればそんな彼のマイペースぶりやノリにも慣れている。いいよって軽く返事した。
マーケットまでの道のりをてくてくと歩きながら、どんなハロウィン料理を作ろうかと考える。
パーティと言ってもゲストを呼ぶつもりはないらしい。二人で仮装してゲームしておうちデートを楽しむのだとか。
果たしてそれは盛り上がるのかと頭の中にクエスチョンマークが並んだけど、悟は"仕事が終わったらすぐ行くよ"ってメッセージを送ってきて張り切っているようだ。
だったら雰囲気だけでもパーティーっぽい料理がいいかなと、生ハムサラダとカプレーゼ、熱々のマカロニグラタンとかぼちゃのポタージュスープを思い浮かべる。
オリーブオイルと塩を振ったバゲットをカリカリに焼いて添えれば、それらしくなるだろう。
デザートにはパンプキンパイを焼いて、後は悟が持ってくるシャンパン……ではなくシャンメリーで乾杯すれば完璧だ。