第10章 本当の出会い
実際にこの頃、万愛は時々悟じゃなくお兄ちゃんって呼んでた。
飯の時間になっても隠れてて、万愛がいないっていうから、菜の花畑から見つけ出して、俺が先導して家まで走る。
「おせぇよ。もっと早く走れねぇの?」
「待ってよお兄ちゃん」
すぐこけるから手を引いてやると、菜の花の黄色なんかに負けねぇくらいまばゆい笑顔を見せた。
「手あったかい。お日さまみたい」
「あっそ」
幸せそうに見えた。
そんな万愛のあどけない一挙一動は、なんか胸にくるもんがあって、俺が才能を持った呪術師として五条家に生まれ、生きてきたこの10年間で欠落していた何かを、埋めてくれているような気がした。