第10章 本当の出会い
そうやって五条の家にやって来た万愛は、誰も知らない人間ばかりの中で、寂しかったのかつまんなかったのか、俺を見つけると声をかけてきた。
「悟、隠れんぼしよ」
「隠れんぼ? 笑わせんな」
「鬼が嫌なの? なら悟が隠れていいよ」
「そういうことじゃねー」
"もういいかーい、まぁだだよー"って、そんな幼稚くせぇことを俺に言わせる気か? 天賦の才を持って生まれたこの俺に?
やってられっか。万愛は俺への畏敬の念がたりねーんだよ。
「オマエさ、お兄様って呼べよ」
「お兄さま? 悟はお兄ちゃんなの?」
「さぁね。けど今日でここに来て1ヶ月だろ。俺の近くにオマエを置いてるってことは、いよいよ兄妹なのかもな」
「お兄ちゃんか」
「お兄様な」
「兄貴」
「お兄様だってんの」
「えらそー! 悟の妹やだ」
「オマエの方がえらそー」
んなこと言って、ほんとの兄妹みたいに喧嘩したな。
けど、この時万愛が一番頼りにしてたのはきっと俺で、「悟、悟」って懐いてきて、正直嫌な気はしなかった。