第9章 さよなら五条先生
両頬を指で挟んでぷにぷにと押しながら何か考えている。
「先生、行かなきゃ。早く!」
「発動条件はなんだ? なぜ突然現れた」
「そんな事いいから」
「これまで全く現れる気配がなかったのに急に現れたって事は、何か術式の発動条件が揃ったはず……」
五条悟は呪術師の顔になっていた。クローゼットの四隅を念入りに見渡してる。
私は焦った。次にいつこの機会がくるかわからない。この空間もいつ閉じてしまうかわからない。
「先生、私、荷物つめてくる」
いったんその場から離れて急いでカバンの中に先生の私物を詰め込んだ。あまり時間がないと思ったから思いつくまま。
着替え、制服、アイマスク、五条先生用の引き出しの中にあった日用品全て。カバンを持って急ぎ足で戻る。
「これ持って。行って、早く!」
「いや、まだ僕はここにいるよ。君のこともう少し知りたいしね」
耳を疑った。