第9章 さよなら五条先生
「荒っぽいねー。だからやめない? こういうの」
「ぐだぐだうるせーんだよ」
パンチのすかしをくった男は体勢を整えて再度、左フックを試みる。それも五条先生はまるで風のように静かに避けた。
次から次へと繰り出されるボクシングみたいな攻撃を流れるようにかわす。
このままでは五条先生も埒が明かないと思ったのか、大きく一歩後ろへ飛び退いて、間合いを取った。
「仕方ないねぇ」
そう言って胸の前で手のひらに拳を押し当て、コキッと指を鳴らす。
「ちょっと鈍っちゃってるから急所外せないかも。真面目に避けてね」
それから勢いよく地面を蹴った。