第9章 さよなら五条先生
外からスミレさんにくいくいって手招きされたから、顔だけ玄関の外にひょっこり出した。
「なんですか?」
「ジョー、いい男じゃん」
「どこが? ボブの方がいいと思う」
「イケメンの高身長じゃんか。ルックスだけで楽しめる男と女の関係ってあるじゃない。ふふ」
私にウィンクしてもう一度ドアの隙間から部屋の中のジョーを見ようとする。
「ダメダメ。ジョーは絶対だめ。おすすめしない。浮気は良くないですよ、スミレさん」
「なんなのそのガード。ボブとは結婚してないし法的には私は自由。それに今、彼、国に帰ってて夜寂しいのよね」
「絶対ダメぇ! ジョーはえっちがド下手です」
「したことあんの?」
「ないけど……とにかくスミレさんが思ってるようないい男じゃないから」
「あら、あららら? 神坂ちゃんムキになっちゃって。冗談のつもりだったんだけどこれはマジ? ひょっとして恋してる? ジョーに」
「ち、ちがいます!」
完全にイライラする前にドアをバタンと閉めて中に入った。
恋? 恋だって?
違う、これはジョーを守るためなんだから。彼が二次元だってスミレさんにばれないため。