第6章 デートの練習
先生が傘の端の露先を親指でぐいっと持ち上げた。雨は小降りになったようで遠く空を見上げている。
「さっき僕のことを光だって言ったよね」
「うん」
「千愛はあれかな」
「ん?」
目線の先を辿るとそこには虹がかかっていた。
「千愛のいろんな色の光に魅せられる。んで雨が上がった後、そっとそこにある。そんな感じ」
…………それはあまりにも美しい褒め言葉で、私の心臓は魚みたいに大きく跳ねて、呼吸も何もかもが止まってしまったんじゃないかと思った。
もし今、私と五条先生との間に次元を超えた何かが生まれてるのだとしたら、それはなんていう感情なんだろう。まだそれを言葉にはできなくて……。ただひとつ言えることは――。
この先もう二度と会えないとしても、明日、別れる日が来たとしても、それでもこの世界で、あなたに出逢えてよかった。
五条先生もそう思ってくれてるなら嬉しいと思う。