第6章 デートの練習
「僕と千愛のデート記念ね」
会計を済ませた五条先生が、マグの入った紙袋を私に見せた。持ち手の紐にリボンが付いている。
「記念なんて、そんな大袈裟な……」
「こういうの好きじゃん。サプライズとか」
「うんまぁ。って私、そんなこと言った?」
五条先生が少し困ったような顔を見せた。
しばらくして「一般的な話だよ」って視線を逸らしたけどなんだろ。
気になるけどまぁいいかと紙袋に目を向ける。実際、五条先生が言うようにプレゼントみたいにしてくれた事がすごく嬉しかったし、黙ってマグを見ていた私の気持ちを汲んでくれたことに喜びを感じた。
「ジョーありがとう。早速、明日の朝はこのマグに珈琲いれるね」
「砂糖もミルクもたっぷり目でよろしくね」
「わかってる」
ん? 今、お砂糖入れてって言ったよね。ダイエット中じゃなかったっけ。洋食屋での会話を思い出す。
もしかしてさっき彼がスイーツを食べなかったのは、お金を残しておくためだった? デートの記念になるものがあれば買おうと思って。
そういえばオムライスも一番ノーマルな安いオムライスを頼んでいた……。