第6章 デートの練習
「また買いに来ますね」
そう言って、草団子3本が入ったビニール袋を受け取る。また来てねぇってお婆ちゃんの声を背中で聞いて私と五条先生は一緒に店の軒先を出た。五条先生が私に向かってすっと手を伸ばす。
「持つよ」
「……ありがと」
お団子が入った袋を五条先生に手渡して、二人で並んでアパートへと向かう。後ろを振り返ると、お婆ちゃんがニコニコと笑って見送りしてくれていた。
「よかったのかな。おまけもらっちゃって」
「いいんじゃない。否定したって誰の得にもなんないと思うよ」
「でも……さっきのあれは……ちょっと」
「ん? さっきの」
「僕には勿体無いとかなんとかって」
「あぁ……嫌だった?」
「……ううん」
嫌ではないんだけど、胸の奥がくすぐったいというかなんというか、むず痒いような気持ちになる。
「思ったまま言っただけだよ」
五条先生はさらりと言ってのけた。ドクンと心臓が跳ね上がる。
実際私はお嫁さんじゃないし、特に深い意味はないのだろうけど、平然とこういう事を口にするから困ってしまう。気恥ずかしくて下を向いた。