第55章 #55 エレンの失踪
「我々は各国に散った"ユミルの民"の難民へ援助を求めます!!彼ら難民はエルディア人であったこともなくエルディア帝国の危険思想とは無縁なのです!!」
次の日、調査兵団のメンバーはユミルの民保護団体の演説を観覧した。
もしかしたら我々と和平交渉が出来るのではないかと淡い期待を持っていたが、その演説はパラディ島の人間に厳しい現状を突き付けた。
「彼らはただエルディア帝国に交配を強いられた哀れな被害者なのです!!依然憎むべきは島の悪魔共に他なりません!!忌むべきは100年前よりあの島に逃げた悪魔!!我々の敵はあの島の悪魔なのです!!」
やはりパラディ島の人間は悪魔として敵視されている。
和平交渉など出来るわけがない。
酷く落胆する調査兵団全員、するとリリアが静かにエレンが立ち去るのを視界に入れた。
辺りを目だけで見渡したリリア、リヴァイとハンジは二人で何やら話をしている。
リリアは音を出さず椅子を引くと、二人にバレないように立ち上がり、エレンを追いかけた。
「エレンっ!エレン!」
「リリア兵長……」
会場から少し離れた所でエレンに追い付いたリリアは、エレンの腕を引っ張ると建物と建物の間の狭い所に隠れた。
「エレンどこに行くの?」
「………どうして来たんですか。リリア兵長には関係ありません。戻ってください」
「嫌だよ、一人で抱え込まないで何でも言って?出来る事は協力するから」
エレンは全く顔を上げない。
視線を合わせたくないようだ。
「………どうしてオレに関わりたがるんですか?」
「大事な仲間だからだよ!!」
エレンが目を見開く。そして苦笑いをした。
「ほら…オレと同じじゃないですか…」
「え?」
「だってリリア兵長、絶対にオレの味方するじゃないですか!!」
「当たり前でしょ!!」
「それが嫌なんですよ!!!」
ガッと勢いよく肩を掴まれ壁に押し付けられてしまった。