第3章 からだと心
表通りに出ても しばらくは肩を抱かれながら歩く…
「あの…ありがとう」
たぶん私は彼に助けられた
素顔が露になった時に彼は気付いたんだ あの2人の男に…だから私の顔を隠してキスをする振りをして スカートをたくしあげて足を見せた
顔より足に視線が向くように
「俺の名前はファーラン あんたの変装を外したのは俺だからさ あれは俺が悪い それに…色々触って悪かったな」
「私はカナコだよ あれは私を庇ってくれたって分かってるから大丈夫…ファーランありがとう」
ウィッグを被る隙はなかったからフードを深くかぶっていた でもありがとうの言葉は顔を見て言いたかったから 顔を上げようとしたら肩に置かれていた手が頭を押さえた
「顔はあげなくていいよ カナコは律儀だねぇ…俺はあんたを利用して奴に会おうとしてんだぜ」
「会ってどうするの?」
「今は秘密」
なんとなく肩を抱かれながら歩いていたけど ちょっとした広場に置いてあるベンチを見つけて2人並んで座った
「家に帰んないの?」
「帰らないよ…ファーラン家まで付いて来るでしょ だからここでリヴァイを待つ事にする」
約束なんかしてないけど 18時をすぎても私が帰ってこなければリヴァイは先ずジルの店に行くはず この広場ならたぶん気付いてくれる
腕を掴まれた時のファーランの目が怖くて顔を余り見る事は出来なかったけど それでもジルや市場で働く人達とは違う闇を持った目をしてるのは分かった リヴァイもそうだから
ベンチに座り少し気持ちが落ち着いてからファーランの見ると 少しタレ目の顔が優しく笑っていた
ファーランの縄張りは少し離れた11号階段辺りで 少し前からリヴァイの縄張りを手に入れようとちょっかい出していて
決着を着けようと仲間とケンカをふっかけた結果があの日だったらしい
ボコボコにされたから治療代が高くついたとか
10人くらいの仲間がいて皆で協力しながら悪さをしてるらしくて 私に話せる程度の面白い失敗話や天然な仲間の話をしてくれて
ファーランの薄い灰色の目が楽しそうに笑う…
「なんとなく分かった…」
「なにが?」
「リヴァイがファーランを殺さなかった理由 」