第10章 出発
「僕もこの苦味は気になるんだ」
小さなポットからさっきより少し赤みが強い液体がカップに注がれると甘酸っぱい香りが広がった
「これはローズヒップをブレンドしたんだ 飲んでみて」
紅茶の香りはローズヒップと混ざり薄れたけど ローズヒップの甘酸っぱい味と苦味のバランスが良くて飲みやすくなっている
ただ紅茶っていうよりハーブティに近い感じだ
「美味しい 私は好きだけど…リヴァイは多分そっちの方が好きかなぁ…」
「リヴァイ?」
「カナコの旦那さんだよ 今は壁外調査に行ってるけどね カナコは旦那さんへのお土産を探しているんだよ」
驚くジルさんの顔を見てモブリットは面白がっていた
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「今日はもう大丈夫だから」
そう言ってモブリットは私を部屋に送ってくれた
夕食に間に合う時間に帰ってきたけど 町でサンドイッチとオレンジを買ったから自室で食べた
テーブルの上を片付けてジルさんの店で買った紅茶を台所の棚に入れた
紅茶はリヴァイの好きそうなブレンドにした
それとは別の紙袋に入った2つの箱を取り出しふたを開ける
紅茶を飲み終わってティーセットが並ぶ棚を右側の上段から見ていき 私は右から3列目の下から2段目にあったティーセットに一目惚れをした
白磁のティーポットで胴の部分がふっくらとりんごみたいな形をしている
注ぎ口の縁が薄いピンク色でその色が胴体に向けて淡く広がっていた 持ち手の背の部分には金の細いラインが2本入っている
5客セットのカップは白磁でそれぞれ取っ手の部分に 金 銀 水色 ピンク 緑 と細いラインが2本入っている
カップの縁が外に広がってないからリヴァイの変な持ち方でも飲みやすいはず
明日…帰ってきたら 好きな色を選んでもらって4人で紅茶を飲むのが楽しみだ
すぐに使えるように洗って布巾をかけた
きっとみんな無事に帰ってくる…薬指の指輪にキスをして みんなの無事を祈りながら眠った