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お隣さんはブラック本丸

第6章 平行世界


 平行世界というものはやはり流れが違う。私が生まれ育った世界もまた平行世界と言えば平行世界なんだろう。
 軸となる世界を一つ決めて、他の世界を平行とする。その際に生まれるのは違いだ。名前、親、友達、全てが同じなのに、違うのは出会う場所、時間。そして時の流れ。
 つまり、私がこのまま生を続けても同じようにはならないのだ。かつてと同じ。そんな奇跡は起こるわけが無い。起こらなかった。

「誰にも祝福されない苗字ちゃん。中学もよろしくね」
「……」

 父が母と再会して再婚するのは私が小学三年の時だった。それなのに今の世では父は昨日、母と再会したのだ。もう既に違いが出ている。
 いや、そもそもお隣が本丸という有り得ない現象がある時点で違いなのだが、それはまた別の話だ。
 今日は小学校の卒業式だ。私の、卒業式。七つを過ぎれば関わらないと思っていた隣の本丸ともズルズルと関係がある。
 お隣さんの審神者の情報も、ここ数年でよく集まった。まだ二十代で髪は栗色に染めていて顔立ちは美人。だが、性格はクソ。美しいものと強いものが好きで、体の関係を複数持つ、所謂ビッチと言われる。そして、本丸に帰還するのは年に数回。片手で数えて足りるレベルだ。
 虐待が激しくなることは無いが、資源を集める気も手入れをする気もなさそうだ。恐らく私という存在がバレたら激しくなるだろうな。

「ちょっと聞いてんの!!」

 近くで喚いているガキが煩いなと現実逃避という名の思考をしていたのに、髪を引っ張られて現実に戻される。いじめというのは終わらない。そいつらと離れるまで。助けてくれる大人もいない。助けを呼ぶ気もないし期待もしてない。
 髪を掴む手を叩き落としてその場から離れれば、後ろでキーキーと喚いていた。それくらい元気なら嘘泣きでもすればいいのに。私の立場を追い詰めるならそれくらいしなきゃ。
 冷めた目で何の思い出も無い学校を見つめ校門から出る。このまま夢もないまま大人になるのは些かしんどいなんて。

「おかえり」
「え?」

 地面を睨みつけるように歩いていれば、聞き慣れた声が聞こえた。思わず顔を見上げれば、軽装姿の髭切がいた。どこで買ったんだろ。
 ぽかんと口を開けてれば、彼は美しい笑みのまま私を抱き上げた。困惑する私は綺麗に無視のようだ。

「お祝いしよっか」

 確定事項の言葉だけが聞こえた。
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