第4章 目撃
この地に越してきて、あの本丸の男士達と関わるようになってから約半年ほど経った。なんだかんだと隣の本丸の男士から気に入られてる気がする。
今日も今日とて一人で遊んでいたら本丸に拉致られた。隣の家に迷惑をかけるなと散々言われているが、私だって関わる気は無いのだ。放っておきたいのだ。絡まれるんだ。
「……こない」
キョロキョロと辺りを見渡しながら、私を捕まえた張本刃を待つ。こじんまりとした部屋。おそらく遊び部屋に私を置いて、どこかに行った石切丸に小さく息を吐く。
肥前が側にいないから素を出すことも寛ぐことも出来ずに、ひっそりと部屋の中で縮こまるだけ。
落ち着かない。
もう一度息を吐きかけた時、女性の金切り声が響き渡った。体が強ばると同時に、バレてはいけないと押し入れの中に身を隠す。
距離。声からして近くだ。どんどん近づいてくる足音が、私のいる部屋の戸を開けた。雑に投げられた音と大きな破裂音が耳に届く。
ダメだ。いけない。関わっては。知ってはいけない。
頭の中でグルグルと文字が流れているのに体が止まらない。そっと押し入れの隙間を開けて覗き見る。
「弱いくせに!! 私に楯突くな!!」
浅葱色の羽織に、青い髪。大和守安定だ。その隣には加州清光がいて、同じように女審神者から叩かれて蹴られている。
あぁ、ダメだ。飛び出したい。辞めさせたい。でも迷惑がかかる。
変に飛び出して誰かもわからぬ男士が傷ついたら。変に庇って私を出入りさせてる石切丸達がバレてしまったら。
息が上手く吸えない。辞めさせたい。迷惑がかかってはいけない。辞めさせたい。エゴを押し付けてはいけない。
心臓が痛い。どうしたらいいの。私はどう選択したら正しいの。偽善は嫌いなの。
また響いた大きな破裂音。そして、棚に当たった大きな音。安定と加州が突き飛ばされた。
あぁ、苦しい。やめて。お願い。やめて。
強く目を瞑った。覗いたのは自分なのに。
暫くするとキャンキャン吠えまくる女の声が聞こえなくなって、足音が消えた。漸く出ていった……。
終わったという安心で力が抜ける。ようやく息が吸えた気がする。
「……子ども?」
ほっとしたのもつかの間。突然、押し入れに光が入った。
ひやりと心臓が縮こまると同時に聞こえた安定の声に思わず顔を上げた。