第6章 素直 後編【※錆兎】
錆兎の顔が、陽華の顔に覆いかぶさるように近づくと、その唇と唇が静かに重なった。
蕩けそうほどに優しく、ゆっくりと唇を食まれ、その心地よさに、陽華の緊張が一気に解かされていく。
「ふっ…、んっ…、」
唇の端から時より漏れる、陽華の不慣れな息遣いを、耳に心地よく感じながら、錆兎はチラッと目を開け、様子を観察した。強く目を閉じて、必死に口づけを受ける陽華の姿が写り、その可愛い姿に、錆兎は気持ちが一気に高揚していくのを感じた。
(……はぁ、可愛い。)
堪らずに唇を押し付けると、開いた陽華の唇の隙間から、舌を挿入させた。
「んっ!!」
驚きで身体をビクッとさせる陽華の口内を、舐め回すように舌先を動かす。
(…錆兎の…舌が…、んっ…)
柔らかな舌先で、口内を侵される感触に、脳内さえも侵されていくようで、頭が真っ白になっていく。その初めての体験に身体が強張り、陽華は思わず、錆兎の胸をグッと押し返した。
「っ…、いやっ!!」
その行動に、錆兎が驚きの表情で固まった。
(……また、拒否…された…?)
錆兎の脳裏に、初めての口づけを拒否された苦い記憶が蘇る。