第3章 先輩【※冨岡義勇】
陽華が気がつくと、義勇は心配そうに顔を覗き込んだ。
「……先輩?」
「気が付いたか?……済まない、無理をさせた。…本当に、止まらなかった。」
反省するように落ち込んだ顔を義勇が見せる。ちょっと記憶が飛んでいる。陽華は周りを見渡した。道場に寝かされていて…それで…、すると突然、記憶が蘇ってきた。
「あ、私っ!」
顔を真っ赤にさせて、起き上がり自分の身体を確認する。すると何事もなかったかのように、身なりが整えられていた。
「あ…、綺麗になってる…?先輩がしたんですか?」
「あぁ、身体はちゃんと拭いた。」
(先輩に後処理されたってことは、大事な部分も拭いて貰ったって、ことで…、)
そう考えると、急激に身体が熱くなった。
「……もしかして、見ましたか?」
「み…、見てない。」
義勇が気まずそうに、顔を逸らす。絶対に嘘だ。そう思い、上目遣いで睨んで見る。
「それは……少しは見た。」
「やっぱりっ!!」
最悪だ、弄られただけじゃなく、全部見られた。好きだって告白されたその日に、全ての項目ふっ飛ばして、そんなところまで、されてしまった。
恥ずかしさに涙目になってると、義勇が慌てて、陽華のそばに座り込んだ。
「本当に済まない。最低だったと自分でも反省はしてる。……でも、お前が可愛くて…、つい…、」
そう言って、慌てて言い訳する義勇に、陽華は小さくため息をついた。
「……別に、恥ずかしかったですけど。……嫌じゃ、なかったです。」
その言葉に、義勇は救われたとばかりに、安堵の表情を浮かべた。しかし陽華はもう一度、義勇を睨むと釘を差すように言った。
「でももう、二度としないでください。」
「あぁ、誓う。もう二度と、こんな事しない。……ん、二度とか?」
付き合いたてなのに、全てのお触りを禁止されてしまった。可愛い唇にキスすることも、あのふわふわの感触に触ることも、触った時に可愛く鳴いたあの声も、聞くことはもう出来ない。