第11章 進物 中編【冨岡義勇】
「これは…あれだ…、お前が俺の前で不可思議な行動ばかり取るから、それが可笑しくて笑ってしまう…だけだ。」
「義勇さん、ひ…酷いですっ!」
赤い顔から一転、頰を膨らまして怒るいつもの姿の陽華に義勇は安堵して微笑む。
「また、面白い顔をしてる。」
「してませんっ!」
義勇に詰め寄りながら答えると、義勇はそのおでこ辺りに手を付いて押し戻す。
「ほら、あまり遅い時間になると、妙さんが心配する。忍者屋敷に行くぞ?」
「え!?ま、まってくださいっ!」
まだ話してる最中なのに、颯爽と歩き出してしまった義勇を、陽華は慌てて追いかけた。
一 同時刻・産屋敷邸
「あまね、私の子供たちは楽しくやってるかな?」
庭に面した縁側に座し、この家の主、産屋敷耀哉は妻・あまねに問いかけた。
「はい、お館様。鴉の報告によると、みんな順調に任務をこなしているようですよ。」
「流石は柱というべきか、皆優秀だね。」
「陽華さん達はこれから、忍者屋敷迷宮へと向かう予定です。」
「そうか、なら天元としのぶの出番だね。」
耀哉が口角をわずかに上げ、含むように微笑む。
「それにあの男……、彼の出番ももうすぐだ。どんな終焉を迎えるのかな…楽しみだね。」
そう言って柔らかく微笑むと、耀哉は微かに感じる陽の光を仰ぐように、青い空に顔を向けた。
「それと、あまね。これが上手く行ったら、次は小芭内と蜜璃にしようと思うんだけど、どうかな?」
「お館様、いい加減にしないとそろそろ隊員達から、嫌われてしまいますよ?」
そう言って、あまねは耀哉に向かって、柔らかくにっこりと微笑んだ。
ー 進物 中編 完