第6章 素直 後編【※錆兎】
「済まない、お前の上に出して。」
錆兎は近くに置いた手ぬぐいを取ると、陽華の腹にぶちまけた液を、優しく拭き取った。
「大丈夫、自分で拭くからっ!」
陽華が慌てて身体を起こして言うと、錆兎はそれを制するようにこう言った。
「俺が汚したんだから、自分でやる。」
若干、拭かれてるのも恥ずかしい…とも言えず、陽華はちょっと照れながら、顔を伏せた。
拭き終わると、錆兎は陽華を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
「な、何っ!?……ちょっと、苦しいっ…離してっ、」
「絶対にやだ。離したら、お前、帰るだろ?」
いつも行為が終わると、さっさと帰ってしまう陽華を、逃さないとばかりに強く抱きしめる。
「……今日は、帰らないわよ。」
「そうか。……じゃ、一緒に寝てくれるか?」
「え?」
「こういう時、恋人同士は同じ布団で寄り添って寝るのが普通だろ?……俺、ずっと憧れてたんだよ。待ってろ、今、布団敷いてやるから。」
「…え、ちょっと…、」
戸惑う陽華を余所目に、錆兎が布団を敷き出した。敷き終わると、ちょいちょいと手招きする。
「ほら、来いよ。」
陽華は、逃げられないと覚悟を決めると、下敷きにしていた布地を広い、前を隠し錆兎に近づいた。
先に布団の中に入った錆兎に手を引かれ、渋々布団の中に潜り込むと、すぐに錆兎に抱きすくめられた。
「お前の身体、柔らかくて気持ちがいいな。」
「そんなことないでしよ。……鬼殺隊員なんだから、筋肉質で硬いわよ。」
そう言われて錆兎は、腹の辺りに当たる柔らかな膨らみに腹を押し当てた。
「ここは…柔らかいけどな。」
「……ばか。」
「疲れてるから、寝たいけど、こうしてると、反応しそうで、やばいかもな…。」
ちらっと本音を溢した錆兎に、陽華が慌てた顔をした。
「…で、でも私、もうっ…、」
疲れて、無理。そう言おうとした陽華を遮るように、錆兎は微笑んだ。
「大丈夫だよ。もう一回したいなんて、言わない。」
そういうと、愛しそうに陽華の額に頬を擦り付けた。