第58章 ❤︎ 射精管理 岩泉一
≫一side
合宿や練習が重なって二人きりになれたのは久々の事だった。だけど普段から人気は少ないとは言え軽い気持ちでキスをしたのが全ての間違いで、何度も唇を重ねているうちにいちかの方から体を擦り寄せ頬を赤く染めて、じっと見つめる表情につい欲が出てしまった。
付き合いも長くなれば何が欲しいのかくらいすぐに理解できてしまうのはある意味問題なのかもしれない。
「したくなっちゃった」
「俺も。ちょっと話するだけのつもりだったんだけどな」
「どうしよう」
「校舎裏行くか?今ならだれもいねぇだろうし」
「……うん」
校舎裏は中庭を抜けてすぐだった。今はゴムも持ってねぇから触れるだけになりそうだけど今はこの悶々とした欲をどうにか処理したかった。いちかの手をとると足早に校舎裏へ向かう。
しんと静まり返ったその場所で柱と壁に囲まれた死角に入り周りを確認してからいちかを抱き寄せた。いちかの体の感触にまたじわじわと湧き上がっていく。けど仕切り直しのキスは顔を逸らされて空振りに終わる。
「…おい」
「待って」
「なんだよ」
「向こうに誰かいるよ?」
「マジで?」
いちかの指差す方へ視線を移すと確かに人影が二つ重なっていた。距離は離れているものの見覚えのある後ろ姿で一目で及川だと分かった。俺と似たような境遇だし、あいつも彼女とは会えてねぇんだろうな。