第54章 ❤︎ 京谷健太郎×夢主=ブラックな岩泉一
≫一side
「ああーっ!」
休憩時間も残り僅かになった時、洗面所から大袈裟に叫ぶ声が聞こえてきた。
「なんだよ」
「ねぇ、ここ、痕、つけたでしょ?」
顎を上げて指差す鎖骨には俺がさっきつけたキスマークが赤く残っている。いつものことだし今更驚く必要もねぇのになんなんだよ。
「別にいいだろ?」
「良くない。今から予定あるのに」
「そんなこと言ったか?」
「言ったよー!付けないでね」
「ゴムのことじゃねぇのか?」
「一はいつもゴム着けないじゃん。どうしよう。コンシーラーで誤魔化せる?夜だからバレないかな?」
洗面台の前でポーチから出した化粧道具で紅い印に肌色を刷り込んでく。確かに馴染んでは行くけどそこだけ明るい肌色に違和感しかない。
「なんでそんな慌ててんだよ」
「予定あるの。言わなかったっけ?」
「男に会う予定か?」
「んー、まぁそう言うこと」
「全然知らねぇんだけど」
「えっちばっかしないでちゃんと私の話も聞いてよね」
「どっちかっつーとお前の方が誘ってくんだろうが」
「だってぇ、一が一番体の相性いいんだもん」
「お前の本性知ると男泣くぞ?」
「泣かないよ。そんな柔な男選ばないもん。特に今回はねぇ、いいの」
「そんないい男がいたのか?」
「この前合コンがあったって言ったでしょ?一みたいに目つき悪くて無口な子だったんだけど、私とは話が合うみたいで二人で抜け出したの。そういうの久しぶりでドキドキしちゃった」