第19章 不器用な優しさ 瀬見英太
「…っん」
下唇を舐めとるように英太の舌が流れ込む。夜とはいえ他の部員が通るかもしれないのに、英太からは容赦ない深いキス。
「…いちか」
色付いた声にドキドキしながら、英太に合わせるように何度も口づけた。
「触れるだけだと思ったのに。……学校でするのってドキドキだね」
「ほんとはもっとしたいけど監督からは30分で帰ってこいって言われてるから」
「そうなの?」
「30分あれば色んなこと出来るけどな…」
「ちょっと、英太」
「するわけないだろ?…けど今年のゴールデンウィークは長いしこうやって2人でも会えないしな…、俺も我慢しどころだな」
「そこはね、まぁ頑張って…」
ということはゴールデンウィーク明けが怖いけど…。
「とにかく明日からも頑張ってくるわ」
「うん。私も邪魔にならないよう頑張るね」
「じゃあもうすぐ時間だから…、宿舎まで帰るぞ」
「うん。会いに来てくれてありがとう」
「おう」
宿舎までの僅かな距離、英太と手を繋いでゆっくりと歩いた。来るときには気付かなかったけど、空には綺麗な星空が広がっていた。
30分間のデート、でも私には特別な時間だった。
fin*