第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
着いた場所はいかにも女子が好きそうな雰囲気のカフェ。そこに男の低い声が響く。
「お疲れー!!」
今回はいつものボトル飲料じゃなくて机には人数分のコーヒーに紅茶が並ぶ。俺としてはこういう女子が好きそうな雰囲気よりもコンビニの駐車場とかファミレスとかの方がいいけど…。
及「そういやちゃんと打ち上げもできてなかったもんね」
花「そーそー。改めていちかちゃん、合宿の手伝いありがとう」
「いーえ。なんだかんだあったけど私も楽しかった。こっち来てええ思い出できたなて思てるよ」
花「よかったぁぁ、誘ったの俺だったし嫌な思いもさせたから責任感じてたから」
松「いろいろあったしね。ほんとありがとう」
「ええよそんなん。引き受けたのは私やし」
及「今日はさ、好きなだけ食べてよ」
「うん、おおきに。遠慮なく食べてる」
及「可愛い。女の子が美味しいそうに食べてるとこってほんといいよね」
そりゃ嬉しそうにケーキを頬ばる姿が可愛いってのは分かる。いちかの目の前には回転寿司かよってくらいに皿が積まれている。
岩「つーかお前、それケーキ何個目なんだよ」
「四個目」
岩「食い過ぎ」
「でも花巻君、ケーキ三個にシュークリーム二個食べてんで?」
岩「あいつは味覚も腹もバグってんだよ」
及「いいじゃん。好きなだけ食べさせてあげてよ、ね?」
いちかは仲裁に入った及川をじっと見つめて珍しく話しかける。
「なぁ、及川君」
及「え?何?」
「おおきに」
及「待って。俺、初めていちかちゃんのデレたとこ見た。……やばい、超可愛い」
「デレてへんし」