第4章 Season 1 きっかけ
「?」
「途中で泣かれちゃったらどうしようかと思った。なんか安心した」
最後まで私のことそんなに気にしてくれてたんだって思ったとたん、私の涙が溢れてきてしまった。
「え??ちょっと、慧さん?」
「……ごめ……」
慌てて裕が身体を離し、私のなかから抜け出るとティッシュを持ってきて目元を押さえてくれた。
「……やっぱ、やだった?」
「……違うよ。逆。裕の優しさが嬉しくて涙が出たの」
身体を起こしながらそう言って、私は裕に笑いかけた。
「ありがと、裕」
裕に自分からキスを。
これでもう、後戻りはできなくなった。
「ところで裕、それ早くどうかしなよ」
気恥ずかしくなって、裕の股間をちらっと見ながら言うと、
「ちょ慧さん、余韻も何もないじゃん」
文句を言いながらも、コンドームを外すと、それを結んでティッシュに包んだ。
そしてゴミ箱にそれを押し込みながら、
「……つか、下、大丈夫かな?」
目を泳がせた。
「あ……」
そういえば、私トイレに行って来るって出たんだっけ?
二人で慌てて服を着ると、お互いに髪の乱れを直しあい、どこかおかしいとこない?と確認してから部屋を出て階段を下りた。
裕が先にリビングに入ると、紘が、
「おめー、何してたんだよ。ぜってーぬけがけしただろー?」
裕の首に腕をかけて締めた。
「ごめんごめんごめんっ」
後からそっとリビングに入った私に順さんが、
「やだもー、トイレ長すぎるわよー」
と茶化してくる。ばれてない、わけないか……。
「で、どうだったの?少しは気持ちが楽になった?」
「……はい、多分……」
「ならいっか。よしよし。しっかり割り切ってスッキリしちゃいなさい」
順さんは私の頭をなでてくれる。
「おめー、俺は明日まで我慢しろって言われて我慢してんだぞ?それなのにもー」
「痛い痛いっ。だって、紘くんに先越されるのが嫌だったんだもん」
紘に反撃しながら裕は訴えた。
「あんたらも面白い関係になったわねぇ。他人事だから笑ってられるけど……。これからが楽しみだわー」
結局うまく順さんの口車に乗せられて、順さんの実験の一部にされたような気がしなくもないけれど、なんだかいろいろうまくいくような気がするから不思議だった。